設⽴趣旨

標準治療の意義

皆さん若しくは⼤切なご家族が不幸にも「がん」などの重篤な疾病(難治性疾患)を患ってしまった場合・・皆さんならどうしますか︖
先ず、我が国での治療で、医師や医療関係者から良く聞く⾔葉に「標準治療」という⾔葉があります。
この「標準治療」とは、「科学的根拠(エビデンス)に基づき推奨される治療」いう意味で、「世界中で⾏われた研究結果をもとに認定された最善・最良の治療法」と定義され、わが国ではすべて、保険が適⽤され広く普及している治療です。
⼤学病院始めとした⼤多数の保険適⽤医療機関や、そこの医師が推奨する治療は全てこの「標準治療」です。⾔い換えると、保険適⽤になっていない治療は「最善・最良の治療ではない」とも⾔えます。
⽇本では、この標準治療であれば⾼額な治療でも国⺠皆保険制度で保証されている「⾼額療養費」の申請をすれば⼀定の⾃⼰負担により、誰もが等しくその治療を受診できます。

診療ガイドラインに則った治療

現在の⽇本では「難治性疾患(特にがん)」と診断された場合、医師からは、この標準治療に基づいた「診療ガイドライン」に沿った治療法を説明されます。この「診療ガイドライン」とは、⾔い換えれば「医師の教科書」で、各がんごとに作成されたもので、ステージ〇ならこの治療、それが終ればこの治療、再発時にはこの治療・・などと細かく定められており、医師は患者に対し、この教科書にのっとった治療と患者さんの年齢・体⼒・今後の希望なども加味して治療⽅針を説明し治療していきます。

定期検査の重要性

「早期のがん」の場合、標準治療での治療法の選択肢も多く、治療も短期間で終了し、その時点で命に係わる様なことは殆どありません。そのために「早期発⾒の為の検査」は⼤変重要です。特に40歳を過ぎたり、危険因⼦の在る⽅は「定期的な検査」を受診することが⼤切です。

標準治療の限界

早期発⾒〜早期治療でがんを根絶出来る事が最善ですが、がんは無症状な事も多く、発⾒が遅れると「命に係わる状態」まで発展することは稀ではありません。
どんな状態であっても、医師は患者さんに対し希望を聞きながら「診療ガイドライン(標準治療の教科書)」に沿ってできる限りの治療をしてくれますが、この状態(ステージ4︓転移)になってしまうと、「標準治療のみでできること」には限界があります。例えば、抗がん剤治療⼀つとってみても、がんは抗がん剤に負けないように変化する性質(耐性)が在る為、ある程度の回数を経ると効果がでなくなる時期がきます。⼜、放射線治療の場合は、進⾏がんの場合は正常な部位への照射リスクもあり、複数回の治療を断念しなければならないこともあるからです。時間の経過と共にがんも成⻑しますが、反⾯、治療の選択肢はどんどん狭くなり、最終的には「診療ガイドライン」に記載の治療法の中で、打つ⼿がなくなった時に治療は終了し、死を待つことになります。

標準治療の終了・・・その先にあるもの

医師から突然「今の状態は○○がんのステージ4で余命〇ヶ⽉です」とか「これ以上の治療は無理なので緩和ケアをお勧めします」といわれ、頭が真っ⽩になられてご相談に来られる⽅が多数いらっしゃいます。これは、治療が終了してもがんの成⻑は⽌まらない為、がんによる痛みなどの症状を緩和する為の施設(ホスピスなどの緩和処置専⾨の病棟)にて、少しでも穏やかに⽇々を送れるような処置を施したり、標準治療が終わった事に対する精神的なケアも⾏う標準治療終了後の多くの⽅が利⽤されるシステムです。

我が国では「がん」一つとっても年間37万人超の方が命を落としています。

標準治療の素晴らしい事は誰もが認めており、多くの⽅々がその恩恵を享受していますが、わが国において「がん(悪性新⽣物)」による年間死亡者数の推移は、未だ古き良き⽇本⽂化が残っていた約60年前(昭和35年)では年間約10万⼈程度でしたが、現在では年間37万⼈を超えています。これは⽇々1,000⼈以上の⽅が命を落としてる事になります。
これは飛行機事故に置き換えれば、毎日毎日ジャンボジェット機2機が墜落事故を起こし、その乗客乗員が全員死亡している事と同様だと言えます。近年、我が国の「がん」による死亡数がここまで増加し続けている主な原因は、従来の「遺伝や感染」等に加え「急速に進んだ生活習慣の欧米化」や「科学物質に依存した生活環境の変化」などが大きな原因だ!と叫ばれています。
私たちは、このような問題が複雑に絡み合った現代社会の中で「難治性疾患の死亡数の増加を抑制する事」は、現在の標準的な医療のみに頼る体制では改善は難しいのでは?と考えています。

医療情報弱者(患者)の為の「医療決定支援」を

「まだ治療をしたい」と⾔う希望があるにもかかわらず、治療の⼿段がなくなってしまった難治性疾患〜特に「がん」の患者さんは、「緩和ケアに進む方」と、ありとあらゆる手段にて「標準治療以外の治療を探し求める方」に大別されます。
能動的に治療を求める多くの⽅は、インターネットやTVなどで紹介されている情報の多くは「最先端の治療」とか「〇〇でがんが消滅」などといったキラキラした⾔葉でかざりたてられた⽂⾔についつい⼤きな期待を抱いてしまいます。
しかし、残念ながら「怪しい治療情報」や「利益誘導型の情報」が⼤半なのが実態です。
⼀般の消費者が「正確な情報」に出会う事は困難を極め、最終的に「がん難⺠・治療難⺠」となってしまいます。

可能性の⾼い治療もたくさんあります

反⾯、ごく少数ですが、そんな⽟⽯混沌とした「医療情報」の中にも、標準治療のように長く厳しい最終審査は通過していませんが、その⼀歩前の状況で、現在でもある程度の著効が出ている治療や、まだまだ症例は少ないが、リスクとメリットを⽐較し試してみる価値を感じる治療なども多数あります。
これら治療の是⾮は、⼀般の患者さんやご家族が簡単には判断ができないものですし、すべきではありません。

あきらめない「治療」を求めて

私たちは、このような状況に置かれた患者さんに寄り添って、より安全で、より効果の⾼い治療や、複合的に組み合わせる事で効果が高まるような治療を医療界特有の垣根や国境までも超えた医療ネットワークの中から探し出し、ご紹介させて頂きます。
私たちは、標準治療が第⼀の選択肢の治療として捉えています。但し、あきらかに標準治療だけでは治癒が難しいと判断されたとき、若しくは「治療終了」を宣告されたその後でも「あきらめない治療」を求める患者さんや医療者と共に「新たな治療や複合的な治療にチャレンジできる環境作りと普及」を⽬的として持続可能な健康⻑寿社会の実現のために、欧⽶型の複合医療的アプローチをそのまま継承するのではなく、我が国の⾵⼟に合った⽇本型の複合的な医療情報の共有を推進していくことで、医療者(医師・医療従事者)間は基より、医療者とその利⽤者(患者・ご家族)との間の信頼の懸け橋となる事を⽬的に本研究会を設⽴する運びとなりました。